MMTを考える①

ベースとなる貨幣論

MMT(Modern Monetary Theory)、近年話題ですよね。

賛否が分かれていて議論が活発になるのは良い事ですね。今まで経済にあまり興味のなかった人も、「MMTってなんだ?」と調べてみたりすれば、そこから経済への興味が深まっていくのではないでしょうか?

まずMMTを理解する上で重要なのは、紙幣や国債に対する理解です。

ポイントはお金は借用書であり、発行体毎で呼び名が変わるという事です。

日銀の発行する債権(借用書)・・・これが紙幣です。だから日本銀行券と記載されています。

政府が発行する債権(借用書)・・・国債

金融機関が発行する債権(借用書)・・・預金(通帳やオンライン口座)

当座預金保持者が発行する債権(借用書)・・・小切手

他にもありますが、上記4件は必ず理解しておきましょう。

では取引というのはなんでしょう?「物品・サービスとお金(借用書)の交換」または「お金(借用書)同士の交換」の事です。

 

紙幣(日本銀行券)の正体は何でしょう?・・・そうですね、日本銀行が発行した借用書の事ですね。この日本銀行の借用書(原価は20円前後ですが)を10000円とか5000円の信用保証を付けて流通させるんですね。(※因みに貨幣は政府が発行します。)

それに対し国債は政府が発行します。つまり政府の借用書です。A銀行が国債(借用書)を買い取れば、代金は日銀内の当座預金口座(A銀行)から当座預金口座(政府)へと書き換えられます。

預金。これを現金と混同する方が多いですが考えてみてください、もしこの2つが同じであるなら預金残高は流通通貨の総額と同じはずです。イメージし易い様に言い換えると、全員が全預金を引き出す事は可能ですか?不可能です。実際には預金総額は1100兆円程度ありますが、現実に流通している紙幣は100兆程度です。つまり別物なんですね。現在の通貨は兌換紙幣ではなく不換紙幣(信用通貨)である事を理解しなければいけません。通帳で考えればわかりますが、あそこに記載されているのは「金融機関」が「あなた」からいくら借りて、いくら返済しているかを示す「借用履歴記載書」なんですね。だから今の残高は現在「あなた」が「金融機関」にいくら貸しているかを表しています。

 

借用書の行方

ではそれら借用書は、実際にどのような経緯で流通するのでしょう?

まずは「日本銀行券」。

あなたが銀行のATMで現金を下ろせば「日本銀行券」が手に入りますよね。おめでとうございます、あなたの預金から10000円が消え「日本銀行が(コレは10000円の価値があるんだよ)と言っている原価20円の紙」を手に入れました。あなたはその「日本銀行券」を持って、コンビニで「ガリガリ君」を大人買いする訳ですね。するとその「日本銀行券」の所有者はあなたからコンビニに移ります。コンビニはその「日本銀行券」を銀行Bに入金します。そうやって次々に所有権の移転が行われていくのです。

図にするとこんなイメージです。上段が「生活上の行動」で、それを「貸借で説明」すると下段になります。

国債はどうでしょう?

こちらは国が「国債発行しまっせ!利子も付くしお得でっせ!」と売り出し、金融機関が買います(※政府と直接資金移動が可能なのは、日銀に口座を持つ金融機関のみ)。政府が発行した借用書ですから、満期になれば額面+利子が手に入る訳です。満期を迎えた国債は、日銀内の当座預金間で決済されます。コレでその国債(借用書)は消滅します。

 

満期になれば上図の「政府当座預金」から各銀行の当座預金へ「額面+利子」が記帳されます。

MMTとは

では本題のMMTとは何でしょう?

ここでは一つのモデルケースとして公共事業を挙げてみます。

  1. 政府は「何やら今治に素敵な学校が出来たらしいから、学校の前から官邸まで高速道路を作ろう!」と考えます。
  2. そしてお気に入りの小成建設というゼネコンに仕事を依頼します。
  3. 国民の反対を押し切り、立派な道路が完成します。
  4. 現金を持ち合わせていない政府は、政府小切手で100億円支払います。
  5. 小成建設はその小切手を金融機関に持込みます。小成建設の口座に記帳された瞬間にお金流通
  6. 金融機関は受け取った小切手を日銀へ持込み、当座預金に100億円記帳して貰います。
  7. 当然、政府の当座預金は100億円減ります。ここで政府小切手は消滅。

2〜4が財政支出ですね。そして5で初めて国民の間にお金が回った事になります。

この流れで何か気が付きませんでしたか?実は紙幣は1枚も出てきません。ですが「小成建設」の口座にはデジタルなお金が100億円誕生しているんですね。つまりお金は紙幣を刷るから誕生するわけではなく、信用の下で借用書を書いた(記帳した)瞬間に誕生するんです。

この時全体としてはどうなっているのでしょう?

日銀・・・政府預金残高-100億円・金融機関預金残高+100億円で差引き0。

政府・・・日銀当座預金-100億円

金融機関・・・日銀当座預金+100億円・小成建設に対する負債100億円。差引き0。

小成建設を含む国民・・・小成建設から人件費や原材料費、諸経費など様々な形で広く流通します。+100億円。

つまり政府から国民にお金が撒かれた訳です。政府はマイナスになってしまいましたね・・・。これを税収で返済するのですが、足りない分は国債発行で賄うのです。

長くなったので続きは次回。

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